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ものもらい
ある朝起きてみると片目のまぶたが腫れていてびっくり。まぶたにコロコロしたしこりがあり、触れてみるとその部分が痛いという経験をした事ありませんか?それがものもらいです。
麦粒腫とも呼ばれ、まぶたにたまった油などに細菌が感染して膿がたまった状態です。化膿しているので熱感があり痛みを伴います。
ものもらいを引き起こす細菌は、常在菌(日常的に皮膚の表面などにいる菌)が原因となっていることが多いので、細菌性結膜炎と違い他人に移ることはまずありません。たいていは汚い細菌が目の中に入ったためではなく、疲れやストレス睡眠不足などにより末梢の血液循環が悪くなり免疫力が低下するため、いつもその辺にいる細菌が増殖してものもらいとなります。なってしまった場合、抗菌剤・抗生剤を中心に治療することになります。
飛蚊症
何かを見ようとすると、ちょうど見ようとする部分にごみの様な虫の様なものが邪魔して気になってしょうがないことありませんか?その原因は眼球の後ろ側に濁ったものができて、その影が網膜上に映し出されるとこの症状が発現します。
その際問題はなぜ濁りができているかで、網膜が破れてその破片が見えているなら網膜が破れていることが問題です。そのため早期に散瞳して眼底検査を行う必要があります。
万一網膜裂孔を放っておくと網膜剥離となり、さらにそのまま放っておくと失明することも十分考えられます。他の原因となる疾患には硝子体出血・ぶどう膜炎などがあり、これらも治療を要します。
もちろん心配の要らない飛蚊症もあります。眼球の中にはもともと透明なゼリー状の物質(硝子体)があり、老化現象により濁った場合も飛蚊症が起こります。この場合は特に治療は必要ありません。この硝子体混濁が原因の飛蚊症の場合、その症状が一生続くかどうかよく質問されます。当分の間、残念ながら症状は続きますが、何十年かすると硝子体は小さくなるので混濁の位置が移動し、影は感じられなくなります。そうすれば飛蚊症はなくなりますがだいぶ先のこととなります。
光視症
目を動かすと視界の端に光が走って見えることがあります。これを光視症と言います。
眼球の中には光を感じる網膜という神経の膜があって、その内側は硝子体というゼリー状の物質で満たされています。これらの網膜と硝子体にはしっかりと接着している所があり、硝子体が動いて接着している網膜をひっぱると錯覚で光が見えるように感じます。ただ引っ張っているだけの間は問題ありせんが、引っ張りすぎて網膜が破れてしまうと大問題です。
そのまま放っておくと網膜剥離に発展してしまうので治療が必要となります。網膜が破れて破片が見えるようになると飛蚊症が起こります。さらに網膜剥離に発展すると視野が端のほうから欠けてきます。
光視症だけでなく飛蚊症や視野欠損が加わった場合、重篤な状態になっている可能性が高いので、すみやかに眼底検査を受けることを強くお勧めします。
角膜異物
目に何か入って初めのうちはゴロゴロしていたが、しばらくするとゴロゴロしなくなったので放っておいたら、目は充血してくるし見え方もどんどん悪くなってきたということで来院されるケースが多いです。
原因で多いのは鉄粉で、職業としてはガソリンスタンドに勤めている人・自動車整備士・溶接を仕事とする人などに多いです。鉄は錆びるとその錆が角膜に浸み込んでいくので、表面の鉄粉を採っても浸み込んでいる錆が残ってしまい、その部分をハンドモーターを使って削り取ってやらなければならなくなります。削る医師も大変ですが、削っている間じっとしていなければならない患者さんたちの方がもっと大変です。
そうならないように鉄粉が目に入った場合、鏡でよく見て目に刺さっているようであれば、錆びる前に早めに来院されることをお勧めします。
老人性黄斑変性症
網膜の中心部を黄斑と呼び、この部分が視力の大半を支えています。
この疾患ではその黄斑部分の脈絡膜血管に障害が起こって色素上皮細胞が変性するため視力低下が起こります。
この疾患にも良い治療法はありません。
網膜色素変性症
この疾患は網膜が次第に変性(死んでいく)していく病気です。周辺の網膜から変性が始まり中心部へと進行していきます。
初期には、鳥が暗い所が苦手でよく見えない様に、暗所では見にくいという症状がでるので「鳥目」とも呼ばれています。病気が進行すると視野が狭くなっていき昼間の明るいところでも見にくくなってきます。そして周辺の視野がなくなって中心部だけが見える状態になります。その最後に残った中心部の視野も消失して失明してしまう方もいます。肉体的・精神的ストレスがあると変性を早めてしまうケースが多々あるので、そういったストレスを避けるよう注意をはらう必要があります。また強い光を長時間浴びることも変性を早める要因の一つと考えられているので、明るい場所でのサングラスの着用も勧められています。
この疾患は遺伝性疾患(常染色体劣性遺伝)であるので、新たにこの患者の発生を減らすよう近親婚を避ける努力が必要と考えます。
流行性角結膜炎
この結膜炎の症状はひどく、流涙も起こるし上眼瞼の急性濾胞性結膜炎のためゴロゴロします。原因ウイルスはアデノウイルス8型や19型で、8型による流行性角結膜炎は高温多湿である夏季に起こりやすいです。感染して1週間くらいで発症します。言い換えると潜伏期間が1週間もあります。この結膜炎では上皮および上皮下点状角膜炎を起こして角膜混濁をきたすので、できるだけ混濁を残さないようにステロイドの点眼も必要です。治療以外で大事なのは、集団発生しやすいので他人にうつさない事です。ウイルスは普通の消毒薬では死なないので、目の周りを触ったらすぐに石鹸で手を洗うことが大事です。目の周りを触った手であちこち触ってはいけません。
咽頭結膜炎
原因ウイルスはアデノウイルス3・4・7型で、結膜炎の症状は眼脂も少ないですが、全身症状が強く38~39℃の発熱や咽頭炎を起こします。約1週間で改善が見込まれます。アデノウイルス3・4型による流行はプールで起こりやすいのでプール熱とも呼ばれています。プールの季節には要注意です。この結膜炎も他人にうつさないように気をつけることが大事です。
急性出血性結膜炎
症状は非常に強く、異物感や眼通に始まり漿液性または粘膿性の眼脂が出て、まぶたは腫れ結膜は充血・浮腫・出血を起こす。原因ウイルスはエンテロウイルス70型とコクサッキーA24で、潜伏期間は短く1~2日で発症します。
この結膜炎は約1週間で改善が見込まれます。しかし感染性は高いので他人にうつさないように気をつけることが大事です。
中心性漿液性脈絡網膜症
これは網膜の大切な中心部(黄斑)が丸く腫れる疾患です。
この疾患になると見ようとする中心部が暗く見えたり、かすんで見えたり、歪んで見えたりします。
原因は網膜と脈絡膜との間にある色素上皮に小さい裂け目ができ、脈絡膜から漏出液がそこを通りぬけて網膜の下に溜まって丸く腫れます。漏出液が溜まって長期になってしまうと次第に網膜が変性してしまい、一度治癒へ向かっても、また視力が落ちてしまったり、網膜にシワができて物が歪んで見えたりします。
しかし溜まった水は3~6カ月で自然に消失することもあります。だから発病後8週間経過しても自然に軽減しない場合で、漏出点が中心窩より0.5乳頭以上離れた位置にある場合にレーザーによる光凝固を行って、漏れるのを止める治療を行います。
この疾患は40歳前後の男性の片目に好発し、発症は急性で誘因としてしばしばストレスがみられます。
黄斑円孔
この疾患は物を見る中心部を担当する黄斑部の網膜の中心部に円い孔があいてしまい、見ようとする中心部が見えなくなる疾患です。
残念ながら視力は0.1程度となってしまい、治療法もありません。まれに中心部の暗点が広がる網膜剥離を続発することがあり、その際には手術が必要となります(網膜を復位するための)。両目に起こる頻度は30%程度です。
眼球打撲
中学生や高校生が部活で球技をしている際など、運悪く眼球にボールが直撃してしまうことがたまにあります。
この眼球打撲で起こってしまうもっとも問題な疾患は網膜剥離です。この網膜剥離をそのまま放置してしまうと網膜剥離が進展してしまい、全剥離となり失明してしまう可能性があります。そのためできるだけ早期の眼科受診が必要です。もちろん眼球打撲は他にもいろいろな疾患を引き起こします。
主なものを前の方から順番に挙げていくと角膜びらん、角膜上皮剥離、強角膜破裂、虹彩炎、虹彩根部離断、緑内障、そして最初に書いた網膜剥離、さらに眼窩底骨折、顔面骨骨折がある場合、視束管骨折などが起こることもあります。
ボールが眼球の表面を擦ると角膜びらんや角膜上皮剥離などを起こします。硬いボールが高速で眼球に衝突した場合強角膜破裂が起こることもあります。その場合緊急手術が必要です。ボールが当たった衝撃で虹彩が振動して虹彩炎が起こります。虹彩炎を起こした虹彩はいろいろなものと癒着しやすいため、早期に炎症を抑えるためステロイドの点眼などが必要です。また虹彩が周りの組織に触れないよう散瞳剤も必要でしょう。虹彩根部離断がある場合緑内障を起こしている場合があるので眼圧を下げる必要があります。網膜剥離を起こしてしまっている場合、手術により網膜を復位しなければいけません。
眼窩底骨折を起こしていると見る方向によって物が二重に見える(複視)症状が出ます。これも軽度でなければ手術により骨折部分に落ち込んだ眼筋を元の位置に戻し、骨折も元の位置に戻さなければいけません。
視束管骨折も緊急を要する状況で、脳につながる視神経が骨折により挟まれているので、重症の場合早期に手術により視神経を骨折から解放してやらなければ、光すらわからない失明となってしまうこともあります。
球技をやるかぎりボールが目に当たってしまうことはあり得ることなので、当たってしまった場合、早期の眼科受診が大事だと思います。
眼瞼下垂
年齢を重ねているうちにだんだんまぶたを十分にあげることができず目がぱっちり開かなくなるようになりがちです。
上眼瞼の皮膚が覆いかぶさって下垂しているかのように見える偽眼瞼下垂の場合であれば余っている皮膚を切除してしまうだけで良いです。しかし本物の眼瞼下垂の場合には、眼瞼挙筋短縮術か、ひどい場合には吊り上げ術が必要です。眼瞼挙筋に3mm以上あげる機能が残っている場合には眼瞼挙筋短縮術が良いと思われますが、3mm未満しかない場合には吊り上げ術が必要であると思います。吊り上げ術の場合には吊り上げるための筋膜を体の他の場所からとる必要があるので少し手術が大変になります。
閃輝暗点
典型的には、見つめる部分がチラチラして見にくくなることから始まり、ギザギザした光の波が四方に広がり、その内部が真っ暗になります。
その後拍動性の頭痛が起こり吐き気が起こることもあります。これらの症状は後頭葉視覚領の血管収縮とそれに続く拡張に伴って発症すると考えられています。
この発作はたいてい次第に回数が自然に減っていくようです。発作が頻繁に起こる人の場合には、鎮痛剤や血管拡張剤や精神安定剤などを使います。
角膜変性及び反復性角膜上皮剥離
顆粒状角膜変性(グレノー1型)
20歳前後から始まって両目の角膜に小さな濁りができ、年齢とともに濁りが増えてきます。
周辺部の角膜に濁りができても視力低下はありませんが、瞳孔の前に濁りがたくさんできると視力低下が起こります。
著明な視力低下がある場合、表層角膜移植を行います。残念ですが移植してもしばしば濁りの再発が起こります。
斑状角膜変性(グレノー2型)
3~9歳頃に角膜中央部に大型の濁りができ始め10歳代には角膜全体に広がり20歳代でほとんど見えなくなるため、全層角膜移植を行います。移植すれば濁りが再発することは少ないです。
反復性角膜上皮剥離
角膜の上皮がはがれる病気で、朝目が覚めた時に目に激痛を感じることが多いようです。外傷の後に起こるものと、特に原因と思われるものがないのに発症することもあります。
角膜上皮とその下の層との接着に欠陥があるために起こると考えられています。